障害児の家をバリアフリーに|住宅改修で使える補助金と介護保険が使えない理由
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「玄関の段差をなくしたい」「お風呂に手すりを付けたい」
子どもの成長とともに、家のつくりが合わなくなってくることがあります。抱っこで運べていたころは気にならなかった段差が、体が大きくなるほど親の腰にのしかかってきますよね。
ただ、いざ「バリアフリー 住宅改修 補助金」と検索すると、出てくるのは介護保険の20万円の話ばかり。これは高齢者向けの制度で、障害のある子どもは使えません。
障害児には別のルートがあります。この記事では、実際に使える2つの制度と、いちばん多い失敗(工事してから申請してしまう)を整理します。
- まず結論|障害児が使うのは介護保険ではありません
- 3つの制度を並べて比べる
- 制度1|日常生活用具の「居宅生活動作補助用具(住宅改修費)」
- 制度2|自治体独自の住宅改造費助成
- いちばん多い失敗|工事してからでは間に合わない
- 申請の流れと相談先
- 対象になりにくい工事・グッズもある
- よくある質問
- まとめ
まず結論|障害児が使うのは介護保険ではありません
ネット上のバリアフリー改修の情報は、そのほとんどが介護保険の住宅改修について書かれています。支給限度基準額は要介護状態区分にかかわらず20万円で、原則ひとり1回。よく紹介されている、あの制度です。
ただし、この制度を使うには要支援・要介護の認定を受けていることが前提です。介護保険の被保険者は40歳以上(40〜64歳は特定疾病の場合に限る)なので、子どもは制度の入口にすら立てません。
その代わり、障害児が使えるのは次の2つです。
- 日常生活用具給付等事業の「居宅生活動作補助用具(住宅改修費)」(障害者総合支援法にもとづく市町村の事業)
- 自治体が独自に実施している住宅改造費の助成事業
1つめは全国の市町村が実施する事業、2つめは自治体ごとに有無も内容も違う上乗せの制度です。両方を窓口で確認するのが正解で、片方だけ聞いて帰ってしまうともったいないことになります。
3つの制度を並べて比べる
| 制度 | 介護保険の住宅改修 | 日常生活用具(住宅改修費) | 自治体独自の住宅改造費助成 |
|---|---|---|---|
| 障害児は使える? | 使えない | 使える(要件あり) | 自治体による |
| 金額の目安 | 20万円 | 基準額20万円が一般的 | 25万〜100万円など幅が大きい |
| 前提条件 | 要支援・要介護認定 | 障害の種類・等級の要件 | 障害の種類・等級+所得制限 |
| 実施主体 | 市区町村(介護保険) | 市区町村(障害福祉) | 市区町村・都道府県 |
| 回数 | 原則1回 | 原則1回 | 自治体による |
金額だけ見ると自治体独自の助成のほうが大きく見えますが、所得制限が設けられていることが多い点には注意が必要です。以下でそれぞれ詳しく見ていきます。
制度1|日常生活用具の「居宅生活動作補助用具(住宅改修費)」
紙おむつや入浴補助用具でおなじみの日常生活用具給付等事業には、じつは「住宅改修費」という区分があります。正式名称は居宅生活動作補助用具といいます。
これは厚生労働省の告示で定められた6つの種目のひとつで、「障害者等の居宅生活動作等を円滑にする用具であって、設置に小規模な住宅改修を伴うもの」と定義されています。市町村が行う地域生活支援事業の必須事業なので、制度そのものはどの市区町村にもあります。
対象になる工事
自治体の実施要綱では、おおむね次の5つが挙げられています。
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 滑り防止および移動の円滑化のための、床または通路面の材料の変更
- 引き戸等への扉の取替え
- 洋式便器への便器の取替え
「小規模な住宅改修」という位置づけなので、増築や大がかりなリフォームは対象外です。あくまで移動や動作をしやすくするための工事と考えてください。
対象者と金額
ある自治体の種目一覧では、対象者と基準額が次のように定められています。
- 対象者:下肢・体幹機能障害、または乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害(移動機能障害に限る)がある方で、障害等級3級以上。学齢児以上の児童を含むと明記されています
- 基準額:200,000円
- 給付回数:原則1回
ここで押さえておきたいのが、要件が「移動のしにくさ」を軸にしていることです。肢体不自由がある場合は該当しやすい一方で、知的障害や発達障害のみの場合は、この制度では対象にならないことが多いのが実情です。ただしその場合でも、次に説明する自治体独自の助成なら対象になることがあります。
自己負担はいくら?
日常生活用具の利用者負担は、厚生労働省の資料でも「市町村の判断による」とされています。つまり全国一律ではありません。
実際には「基準額の1割負担、ただし市民税非課税世帯・生活保護世帯は負担なし」としている自治体が多く見られます。所得制限を設けている自治体もあり、たとえばある市では18歳以上は本人・配偶者の市民税所得割額46万円未満という制限がある一方、18歳未満の障害児には所得制限を設けていないという運用になっていました。
これも自治体ごとの判断なので、お住まいの市区町村の要綱を確認するのが確実です。
制度2|自治体独自の住宅改造費助成
もうひとつが、自治体が独自に実施している重度障害者(児)住宅改造費助成です。名称は「住宅改造助成事業」「住宅改修費給付」など、自治体によってさまざまです。
こちらは日常生活用具より金額の枠が大きいのが特徴で、実際の例を挙げると次のようになっています。
例1|大阪市(重度心身障がい者・児 住宅改修費給付)
- 児童も対象。身体障がい2級以上または知的障がい重度(A)以上などが要件
- 給付限度額は障害の内容により25万円・50万円・100万円の3段階
- 非課税世帯は自己負担なし。課税世帯は一定額まで1割、超過分は3分の2の負担
- 所得制限あり(前年度分の市民税所得割額46万円を超える世帯は対象外)
- 事前申請が必須。すでに施工された工事は給付を受けられない
注目したいのは、知的障がいが重度(A)以上であれば対象になり得る点です。日常生活用具の住宅改修費が「移動機能障害」を軸にしているのに対し、自治体独自の制度は対象の考え方が違うことがあります。
例2|高知市(重度身体障害者・児 住宅改造助成)
- 学齢児以上の児童が対象に含まれる
- 対象工事費の上限は75万円
- 課税世帯は2分の1負担、非課税世帯は3分の1負担、生活保護世帯は負担なし
- 対象工事は手すりの取付け、段差の解消、床材の変更、引き戸等への取替え、洋式便器への取替えなど
- 改造する前に申請が必要
このように、同じ「住宅改造助成」でも金額も負担割合もまったく違います。だからこそ、他の自治体の情報をそのまま自分の家に当てはめず、必ず地元の要綱を見る必要があります。
いちばん多い失敗|工事してからでは間に合わない
この記事でいちばんお伝えしたいのがここです。
住宅改修の助成は、ほぼすべてが「事前申請」です。大阪市の案内にも「既に施工された改修工事に対する給付は出来ません」とはっきり書かれていますし、高知市も「住宅を改造する前に申請する必要があります」としています。
つまり、こういう順番だと1円も出ません。
- 工務店に相談して見積もりをもらう
- 思ったより安かったので工事してもらう
- あとから「補助金があるらしい」と知って窓口へ行く
正しい順番は、工事の前に窓口へ相談するです。「見積もりを取ってから相談」ではなく、「相談してから見積もりを取る」と覚えてください。自治体によっては指定された様式の見積書が必要だったり、事前に現地確認が入ったりします。
急ぎの事情があっても、契約や着工の前に一度電話を入れるだけで結果が変わります。
申請の流れと相談先
自治体によって細部は異なりますが、おおまかな流れは共通しています。
- 市区町村の障害福祉担当窓口に相談する(工事の前に。ここが起点です)
- 使える制度と、対象になる工事の範囲を確認する
- 施工業者から見積書を取る(自治体の指定様式がある場合はそれに従う)
- 申請書・見積書・図面・現況写真・手帳の写しなどを提出する
- 決定通知を受け取ってから着工
- 完成後に完了報告(完成写真・領収書など)を提出し、給付を受ける
相談先は、市区町村の障害福祉課が基本です。あわせて、相談支援専門員がついている場合はその方にも早めに共有しておくと、制度の組み合わせを整理してもらえます。作業療法士や理学療法士が関わっている場合は、どこに手すりを付けると本人が動きやすいかという視点で助言をもらえることもあります。
対象になりにくい工事・グッズもある
期待しすぎないために、対象になりにくいものも書いておきます。
- 市販の育児用品・防犯グッズ。ベビーゲート、玄関の補助錠、窓ロックなどは、一般に流通している製品なので給付の対象になりにくいのが実情です
- 大がかりなリフォーム・増築。「小規模な住宅改修」という制度の趣旨から外れます
- 本人の障害と関係が薄い工事。老朽化した設備の交換や、家族の都合による模様替えは対象外です
- すでに終わってしまった工事(前述のとおり)
ただし、「対象外だと思っていたものが、自治体の判断で認められた」というケースもあります。自己判断で諦めず、やりたい工事の内容を具体的に伝えて相談してみてください。
もうひとつ、住まいに関わる補助制度として耐震診断・耐震改修があります。こちらはバリアフリー改修とは別の制度で、窓口も違います。避難所で過ごすのが難しいご家庭ほど、家が無事であることの意味は大きくなります。
よくある質問
Q. 賃貸住宅でも住宅改修の助成は使えますか?
賃貸を対象としている自治体もありますが、その場合は大家さんや管理会社の承諾書が必要になるのが一般的です。退去時の原状回復をどうするかも含めて、事前に話をまとめておく必要があります。まずは市区町村の障害福祉担当窓口に「賃貸だが使えるか」と確認し、使えるようであれば大家さんへ相談する順番がスムーズです。
Q. 知的障害・発達障害でも対象になりますか?
日常生活用具の住宅改修費は、下肢・体幹機能障害など移動のしにくさを要件にしていることが多く、知的障害や発達障害のみでは対象外となるケースが少なくありません。一方で、自治体独自の住宅改造助成には知的障害の重度(A)以上を対象に含めている例もあります。制度によって対象の考え方が違うので、ひとつ断られても別の制度を確認してみてください。
Q. 一度使ったら、もう使えませんか?
日常生活用具の住宅改修費は原則1回としている自治体が多いです。ただし、転居した場合や障害の状態が大きく変わった場合の取り扱いは自治体ごとに異なります。子どもは体が大きく変わっていくので、「今すぐ必要な工事」と「数年後に必要になりそうな工事」を整理してから使うと、枠を有効に使えます。相談の際に、将来の見通しもあわせて伝えておくとよいでしょう。
Q. 介護保険の住宅改修は本当に使えませんか?
介護保険の住宅改修は要支援・要介護の認定を受けていることが前提で、被保険者は40歳以上(40〜64歳は特定疾病による場合に限る)です。そのため、子どもは対象になりません。ただし、同居しているご家族が要介護認定を受けている場合は、その方を対象として介護保険の住宅改修を使える可能性があります。家族全体で見ると選択肢が増えることもあるので、あわせて確認してみてください。
まとめ
- ネットでよく見る介護保険の20万円は高齢者向けで、障害児は使えない
- 障害児が使えるのは日常生活用具の「居宅生活動作補助用具(住宅改修費)」と自治体独自の住宅改造費助成の2ルート
- 対象工事は手すり・段差解消・床材変更・引き戸への取替え・洋式便器への取替えが基本
- 金額・所得制限・対象者の要件は自治体差がとても大きいので、他市の情報を当てはめない
- いちばん多い失敗は工事してから相談すること。契約・着工の前に必ず窓口へ
家を変えるのは大がかりに感じますが、手すり1本、段差ひとつでも毎日の負担は確実に変わります。まずは「こういう工事を考えている」と窓口に持っていくところからで大丈夫です。
※制度・金額に関するご注意
本記事に記載の金額や制度内容は、執筆・更新時点の情報です。金額・条件は年度やお住まいの自治体により異なる場合があります。記事中で挙げた自治体の例は「制度の幅を知っていただくためのもの」であり、他の自治体でも同じ内容とは限りません。最新の情報は必ずお住まいの市区町村の窓口や公式サイトでご確認ください。
出典
厚生労働省「日常生活用具給付等事業の概要」および厚生労働省告示第529号/釜石市「日常生活用具一覧」/福山市「日常生活用具費支給事業」/大阪市「重度心身障がい者(児)住宅改修費給付」/高知市「重度身体障害(児)者住宅改造助成事業」/厚生労働省「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」